2008年構造地質部会『夏の学校』“反射法地震探査:基礎・演習・実習”参加報告

名古屋大学環境学研究科 渡辺志穂


2008年8月21日〜8月23日にかけて、千葉大学で2008年構造地質部会夏の学校が、千葉大学理学研究科地殻構造学研究室との共催で行われた。講師に、石油資源開発株式会社の西木司さん、中神康一さん、菊池伸輔さん、地球科学総合研究所の須田茂幸さんをお招きし、反射法地震探査のための講義と実習を行った。反射法地震探査は、石油探鉱の方法として知られているが、いまや広く資源探査、地質・地殻構造解明など、構造地質学の基本的ツールとなっている。参加者は、全国各地から集まり、学生参加者も半数を占めた。反射法地震探査と銘打っているが、参加者はその分野の人達ばかりというわけではない。私もその一人である。私はリモートセンシングの研究室に所属しており、月周回衛星「かぐや」の研究に携わっている。「かぐや」のレーダサウンダのデータ解析のために反射法地震探査の一部の処理手法を使っているが、実際どのようなものかということは分かっていないため、良い機会だと思い参加させていただいた。


1日目は、反射法地震探査の基礎を講義形式で学んだ。反射法物理探査とは?というところから、データの取得、解析、解釈の方法まで初心者の私にも分かるレベルで丁寧に教えていただいた。さらに、講義から学んだことを基に計算演習なども行った。


2日目は、反射断面の解釈実習を行った。全員が同じ断面図から、解釈をマップに落とし、そのマップ上にコンターを書くという作業をした。その後、結果の比較のために全員のマップが並べられた。その結果は驚くべきものであった。全く同じ断面図からスタートしたにもかかわらず、人によって断層の伸びる方向も、コンターの引き方も異なっていた。コンターの様子から、石油の埋まっていると思われる所を推定するはずだったが、私の作成した図では分からなかった。学生の中には、自分の作成した図から、石油の埋まっていそうな構造を探し出し、講師の方に、「ここはどうだろうか?」と熱心に意見を求める姿も見られた。


3日目は、野外での実習とデータ解析を行った。午前中は、千葉大学構内で油圧インパクターなどを用いてデータ取得作業を行った。データ取得するところを見ることによって、ノイズの出方など、結果のデータには観測時の状況がかなり反映されるということを実感することができた。この経験は、観測結果しか見ることのできない「かぐや」のデータの見方にも参考になったと思う。午後は、PC上でのデータ処理を学んだ。速度解析が上手くできたかどうかによって、地下反射面が明瞭に表示できるか否かが決まるということを実感した。


この3日間、多くの人と反射法地震探査について意見を交わすことができた。そのことが、自分の研究に対する姿勢を見直すきっかけともなった。これまでは、疑問をそのままにし、できるだけ研究しない方向へ逃げていた。しかし、この3日間は誰に聞いてもすぐに答えを返してくれるため、今まで溜めに溜めてきた疑問を一気に解決することができ、分かるという喜び、研究の楽しさを改めて実感することができた。懇切丁寧に指導してくださった講師の先生方には、とても感謝しています。


最後に、今回の夏の学校の開催に尽力された松田達生博士、山田泰広准教授、竹下 徹教授、伊藤谷生教授、高木秀雄教授、そして、運営をサポートしていただいた駒田希充さんをはじめとする千葉大学の学生の方々に、心からお礼申し上げます。