構造地質研究会の発展的解消にあたり


このたび,1966年以来40年間にわたり日本の構造地質学分野の発展に関わってきた構造地質研究会(Tectonic Research Group of Japan) が発展的に解消され,1996年に発足した日本地質学会構造地質専門部会に統合されることにな りました.このことは,私自身が火付け役となった経緯はありますが,構造地質学研究会の最後の会長である増田俊明氏,機構改革の大変な時期に庶務を担当された竹下徹氏はじめ,早坂康隆氏,石井和彦氏らのご尽力がなければ,実現はできませんでした.この場を借りて,厚くお礼申し上げます.


構造地質学の専門分野は多岐にわたり,学問の発展とともに細分化,専門化が進んできました.また,様々な地質関連学会が国内外で林立し,とくに若手研究者の業績確保ということもあり,海外での学会への進出,国際誌への投稿もめざましいものがあります.一方において,構造地質学研究会の夏と冬の例会の出席者は,開催担当者の努力にもかかわらず,減少傾向にありました.また,構造地質学研究会の雑誌である「構造地質」は,2名の査読体制がかなり前から確立されており,雑誌の体裁も改良されてきたにもかかわらず,学会誌ではないという弱点もあり,若手研究者からの論文投稿はほとんどみられなくなりました.一方,最近は地質学会にも加入しない構造地質分野の若手研究者も散見されるようになり,地質学会の構造地質部会を活性化させることも重要な課題でした.構造地質研究会会員の多くは地質学会会員であることもあり, 構造地質部会が発足した当時から,統合の話は出ていました.1998年7月に発刊された地質学論集の50号「21世紀の構造地質学にむけて」は,まさに地質学会の刊行物と「構造地質」を合体させたものでありましたが,構造地質研究会の専門部会への統合は時間の問題だったとも言えましょう.


構造地質研究会がなくなり,これまでの例会,雑誌,メーリングリストはどうなるのか?という疑問が挙がるかもしれません.構造地質研究会のメーリングリストに加わっている会員は,これまでのニュースから,すでにお分かりいた だけていると思いますが,念のため簡潔に述べておきましょう.

○例会:構造地質部会の新しい庶務担当(産総研,重松紀生氏)を中心にすでに議論が開始されています.例会が無くなるわけではなく,若手に魅力ある企 画を発案しつつあります.いずれ案が事務局でかたまったら,地質学会の構造地質部会HPに掲載します.むろん,従来通りの専門部会としての活動(地質学 会学術大会のセッションレイアウト作りや夜間小集会の企画など)も,継続します.

○雑誌:「構造地質」は無くなりますが,代わりに地質学雑誌の特集号で対応できます.私は地質学雑誌の編集委員でもあり,また地質学雑誌企画部会に構造地質分野で加わっていますので,構造地質,テクトニクス分野あるいは他領域とのジョイントの分野で特集号を組みたい方の窓口としてお役に立てると思います.過去の「構造地質」を振り返ったとき,10年間にわたって事務局を引っ張って来られた木村克己氏を中心とした発案による「特集号」が私にとっては大変役にたちました.特集号を組む時は,論説のみではなく,総説も加えていただけると,意義のあるものになると思っています.地質学雑誌の掲載予定論文は減少傾向にあり,「特集号」は編集委員会の中でも歓迎されています.

○メーリングリスト:竹下氏が構造地質研究会会員にとったアンケート結果 で,メーリングリストだけは継続して欲しい,という意見は強いものでした.今後は,ホームページとメーリングリストの情報の役割分担も留意しながら,活発な情報交換の場として継続される予定です.

○構造地質専門部会のホームペ−ジ:新しいホームページ担当として橋本善孝氏が中心となり,部会のHPが地質学会のサーバーに立ち上がりました.地質学会の会員,非会員を問わず,新しい構造地質部会の情報や活動がご覧になれるようになります.


構造地質研究会の活動は,今年度3月末をもって形式上は終了しましたが,実質上は終了した訳ではございません.これまで編集担当の石井和彦氏のご尽力 により,「構造地質」の最後の号(49号)がまもなく発刊されます.また,その雑誌に添付される予定ですが,構造地質研究会の最後の会費の請求がありますので,何年分かたまっている方も含めて最後にすっきりと清算していただかなければなりません.引き継がれた構造地質研究会の資産については,今後議 論を重ねて,構造地質専門部会で有効に活用でき,また旧構造地質研究会会員に還元できるように,努めたいと考えています.構造地質研究会事務局の残務がすべて終了した時点で,速やかに会計報告を行い,新しい企画を開示したいと考えています.


今後の構造地質学の発展と地質学会の活性化に,微力ながら努めてまいりたいと思います.


早稲田大学 教育・総合科学学術院

高木秀雄